映画「ヤバい経済学( 原題 : Freakonomics )」

400万部を突破したベストセラー「ヤバい経済学」を映画化した本作は、同作の共著者スティーヴン・D・レヴィットとスティーヴン・J・ダブナーの2人の対談形式で進む。

特に難しい話も無く適度に好奇心をくすぐられる作品で、バラエティー番組を見ている感覚に近かった。(池上彰の裏バージョン?みたいな 笑)

常識や思い込みの裏にある、様々な世界のカラクリを分かりやすく解説しており非常に興味深い内容だったので、いくつかピックアップして紹介しようと思う。

不動産業界

ーーー例えばあなたが30万ドルで家を売りたいと思っている時に、そこに29万ドルで買い手が現れました。不動産業者は「今は市場が軟化しているので、1万ドル粘って買い手を待つよりも、早く売ってしまった方が良い」と言いますーーー

あなたは上記ようなシチュエーションの時どうしますか?不動産業者が29万ドルで今すぐ売る事を勧める理由は「仮に1週間後に1万ドル高く売れたとしても不動産業者が手にする額は微々たる物なので、それならすぐ売ってしまって他の仕事に着手する方が効率が良い」からであり、顧客の事を考えている訳ではありません。

考えてみると当然の事なのですが、このように相手の心理を知っている事で自分の判断がブレにくくなりますね。これはどの業界にも言えることでしょう。

名前で運命が決まるのか?

例えば、日本で言うキラキラ・ネームを付けられた子どもは犯罪者になるのか?という事については、結論としては「NO」。むしろ、そのような名前をつけた親を含めた周囲の生活環境が問題であるとのこと。

日本人にはなかなか理解しずらいですが、アメリカの場合「黒人っぽい名前」や「白人っぽい名前」があり、白人っぽい名前の方が採用の電話が黒人っぽい名前の人よりも約5週間早く電話が掛かってくるというデータもあるので、仕事する上では有利だそう。

相撲界の八百長

日本人としては「相撲界の八百長」を取り扱ったこのテーマが一番興味深かった。大相撲では7勝7敗の力士が同クラスの力士と対戦した時の勝率が75%もありしかも同じ組み合わせの次の対戦では結果が逆になっていることから八百長が行われていることは明らかだと言う。実際に相撲関係者へのインタビューを行って根拠を裏付けるような証言もあり興味深かったのと同時に、告発者の謎の死など、相撲界の闇が想像以上に深い事に唖然とした。

日本の警察の嘘

また、日本の警察の殺人検挙率が96%という数字は、実は「すぐに誰が犯人か分かる事件は殺人扱いにし、特定が難しいものについては死体遺棄事件にして処理する」という中々恐ろしいカラクリである。勿論社会に向けて高い検挙率をアピールする事が、犯罪の抑止や市民の安心感に繋がるのは確かだが・・・実際に起きた殺人事件の検挙率が何パーセントなのか・・・恐ろしい。

高校1年生を買収して成功に導けるか

毎月一定ラインの成績を越えた生徒に50ドルの報酬を出すと、生徒の学力は上がるのか?という実験。更にそれだけではなく、50ドルの報酬がもらえた子は同時に500ドルが貰える抽選に参加でき、しかもその日リムジンで家まで帰宅できるという。これなら全員の学力が向上するだろうと思っていたが・・・結局「やる奴はやる。やらない奴はやらない」という結果に。全体としては20〜30%の学力向上があったそうだが、個人的には思ったより低くて驚いた。しかし、一度報酬で学力が伸びた子の中のどれだけが無報酬になった後も勉強を続けるのか?その辺りも気になるところ。

全体の感想

この作品には「インセンティブと行動」に目を向ける事によって真実が見えてくるという事を教えられた。インセンティブは現実に人を突き動かしており、そこにどんなインセンティブがあるか理解するとその結果や原因を理解することができる。逆にインセンティブによって人を動かそうとしても、正しく作用させることができなければ効果は薄い。常識を疑うことによって見えてくる世界は恐いながらも楽しいものであった。

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